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プロレーサーになったからには、必ず成し遂げたいことがある。誰よりも早くゴールラインを切り、そして表彰台の一番高い場所に上がる。「優勝」だ。2007年12月25日、初めてその栄冠を勝ち取ったのが奥田誠、27歳だ。
「優勝戦には16回出走したことがあるんですが、2位が最高でした。だから、初めての優勝はめちゃくちゃ嬉しかったですね」。初優勝までの道のりは長かった。01年にデビューし、6年8ヵ月もの月日を要した。
その大きな要因は精神面だった。「まだまだ」と話す奥田だが、先輩たちから常々「落ち着けば大丈夫」と言われるだけの力はあった。しかし、精神面
をコントロールできず、それを十分に発揮することができなかった。「とにかくやってやろうとか、勝ちたい。最近ではG1新鋭王座に出たいとか、結婚が決まった後は、結婚式のときにいい自分を見せたいとか。そういうことばかりを考えてしまって、気持ちが空回りしてしまいました」。
そして、それが大きなミスを招いた。07年11月7日、若松で行われたレースでスタート前に規定違反を犯し1週間の欠場を余儀なくされたのだ。「6コースでスタートする予定だったんですが、1コースに入ってしまった。その時点で失格です。そこにいなければそういう結果
になることはなかったけど、気持ちばかりが前に行ってしまって」。勝ちたいという気持ちが募る余り、視野が狭くなった。その結果
、スタート前にレースを終えることになった。
しかし、このミスが大きな転機になった。「試合に出られなくなったとき、改めて座禅の本とかを読んで気持ちを切り替えることができました。だからその後は周りを見たり、落ち着いて展開などを考えられるようになりました」。
初優勝したレース。奥田は2コースから先にターンした艇の内側を鋭く突き抜ける『差し』を決めて、SG戦などに出場経験がある強者揃いを置き去りにしトップでチェッカーを受けた。これまでのように気持ちが空回りし、視野が狭くなることはなかった。「本に書いてあったように、大きく深呼吸してレースに臨みました。すると焦りとかは全くなく、落ち着いてレースをすることができました」。身体の中の焦りを取り除くために、新しい空気を吸い込み、そして吐き出した。その瞬間、集中力が一気に高まった。
7月、奥田には待望の第一子が誕生する。「食べさせていかなければいけないから、もっと上に行かないと。現在はB1級ですが、一番上のA1級昇格が一番の目標です」。家族が増える喜びを力に変え、奥田はこれから走り続ける。結婚式前のように気持ちが空回りすることは、もうない。
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