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連載コラム

COLUMN_01:弁護士 蓮見和章のなんでも法談スタジアム

[File27]

“貸したお金が返ってこない”

貸したお金が返ってこない。たとえ少額でも、貸した方にとっては大きな問題となるのが貸金問題です。特に個人間でお金を貸すのは、ある程度信頼できる人に限られるので裏切られたときのショックも大きいでしょう。それでも、「ごめん今度返すから」と言われてズルズルと引き延ばしてしまい、いつの間にやらうやむやになってしまうことが多いのも貸金問題の特徴です。貸金問題に限りませんが、このようなトラブルが生じたとき、どのように行動すればいいのかわからないという相談をよく受けます。「何とかしたいけど裁判はちょっとねえ」と諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。今回は法的トラブルが生じた際に、一般的にどのような手続きをとって解決を図るのかを説明したいと思います。
一般的にまずはじめに行うのは内容証明郵便というものです。内容証明郵便は、郵便局にその送った文章の内容、送付日時を記録してもらう手紙です。確実に送った内容が保存されるので、後日争いが生じた場合でも安心です。また、内容証明郵便により請求をした場合は、消滅時効の進行を止めることも出来ます。内容証明は一般の手紙とは異なり、配達証明付きなので確実に相手方に届けることができ、相手もそれなりに事の重大さを感じて請求に応じることもあります。それほど険悪な雰囲気にならずに事件を解決できることもあるでしょう。ただ、内容証明郵便もあくまで手紙、受け取った相手方がそれにより何のアクションも起こさなければ、結局のところ貸金回収という目的は実現しません。もちろん実効性もありますが、後述する2つの手続きに比べると「こちらはもううやむやにはしませんよ!」という挨拶程度のものになると思います。野球でピッチャーが投げる球に例えるなら、相手が応じてきたときのみ効果があるが、応じてくれる可能性はそれほど高くないという点で打たせてとるためのボール球といったところでしょうか。
内容証明郵便でも相手が何のアクションを起こさない場合、調停という手続きをとることもあります。調停は裁判所で行われるものですが、裁判官が判断を行うのではなく、あくまで当事者同士の意見を擦り合わせて、合意のもとで解決を図る手続きです。当事者が顔を合わすことはなく、第三者の調停委員を介して話し合いを行うので、客観的な意見を交えながら冷静に話すことができます。また、調停の場合は裁判所から相手方に対して書面が届くので、相手方は内容証明郵便よりも追い詰められ、調停に出席する可能性も高まります。さらに、一度調停が成立すれば、その内容を記した調停調書が作成され、相手方が調書の内容を履行しない場合に相手の財産を差し押さえることができます。ただ、あくまで当事者同士の合意がなければ調停は成立しませんので、相手方がそもそも貸し金の存在を否定したり、返済の条件で折り合いがつかなければ、調停をしてもなんの解決にもなりません。
球種でいえば、内容証明より相手が応じて来る確率が高いが、やはり応じてもらわなければ(振ってもらわなければ)解決が図れない点からすると、ストライクからボールになる変化球に例えられると思います。
さて、こうなると結局相手の出方に関係なく、「借りたお金は返しなさい!!」と裁判所に言って貰うほかなくなります。これがドラマやニュースでよく耳にする裁判です。裁判は、主張と証拠に基づいて、裁判官が経験則をもとに判決を下します。「貸金を返しなさい」という判決が確定すると、どんな言い訳をしてもその決定を覆すことができません。判決があれば、調停調書と同じように相手の財産を差し押さえることができるのは調停と一緒ですが、調停と違うのは、相手が出席しなくても、強制的に裁判は進められるということです。つまり、相手の出方を気にしなくても、自分の請求を実現することが可能なのです。
まさに、相手が応じなくても(見逃しても)ストライク、三振をとれるという点では、ストライクゾーンに入る超速ストレートといったところです。ただ、裁判で怖いのは、相手が貸金の存在などこちらの請求を基礎付ける事実を争ったときです。この時は、原告が証拠によりその事実を証明しなければならず、たとえ本当にお金を貸していても契約書や覚書がない場合は請求が認められなくなる可能性も出てきてしまいます。裁判になると相手方も強行な姿勢になってしまうケースが多いですから、内容証明郵便や調停だったら解決できた問題が、訴訟した結果解決できなかったということもありえることです。抑えてやろうと力みすぎて、ど真ん中に投げて打たれてしまったような感じです。
もちろん、他にも法的な解決の仕方がないわけではありませんが、法的トラブルに巻き込まれた際、多くの事件はこの3つのどれかで解決されることが多いです。どれも一長一短がある手続きですから、球種(各手続き)の性質を知ることが大事です。弁護士は、依頼された事案の性質や相手の性格から、配球(法的手続き)を考え、アウト(依頼目的の実現)を取る存在であることをイメージしていただければと思います。

蓮見 和章(はすみ かずあき)

蓮見 和章 (はすみ かずあき)

弁護士、社会保険労務士
弁護士法人アクティブイノベーション広島事務所所長
早稲田大学法学部卒。身長185cm。学生時代にラグビーで培った気力と体力で、一つ一つの事件に全力で取り組むことをモットーとする。現在はフットサルやゴルフに親しみ、野球やサッカー等のスポーツ観戦も趣味。RCCラジオ「本名正憲の今日もゴゴイチ」、毎週月曜日「それってどうなの?ゴゴのよろず法律相談」出演。日本スポーツ法学会会員。

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