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連載コラム

COLUMN_04:Athlete Park アスリートパーク

ピンチを乗り越え初の日本一

 3月に開催された全国高校選抜大会・ボート男子ダブルスカルで宮島工高の矢野哲圭・野本耕司ペアが優勝を果たし、今年創立50周年記念を迎える宮島工高に華を添えた。宮島工高ボート部創部48年で男子の全国優勝は初の快挙だった。
 矢野・野本の2人は、この春新3年生。高校入学と同時にボートを始めた。「最初は友達に誘われて楽しそうだったから」とボートを始めたキッカケは互いに単純なもの。先に頭角を表したのは矢野だった。「当時の主将とペアを組み技術も向上した」と国体2位、中国地区1位という実績を残し、日本代表合宿に参加するほどに成長。野本も「絶対に同学年には負けない」という負けん気の強さで過酷な練習に耐え、2年時には3年生メインの合宿に矢野とともに選ばれ必死で食らいついた。普段ボート部は1人乗りボートでシングルの練習をメインに行う。昨年行われた大会では2人で1、2位を飾ることもあった。「矢野に勝ちたいという気持ちがモチベーションになる」と野本が言えば、「野本には追いつかれたくない」と矢野は返す。2人は良きライバルとして切磋琢磨してきた。
 迎えた3月、新3年生として全国高校選抜に臨んだ。「当初5人乗りのクォドルプルという種目で出場予定が、ケガ人が出てしまった」。ボート部顧問の中野博夫は急遽、矢野と野本をダブルスカルに出場させた。この種目は2人乗りボートで2000mを漕ぐ。2人がダブルスカルでコンビを組むのは1年生の新人戦以来だった。「仲は良いし(笑)、組むことに全く抵抗はなかったです。出られない人の思いも背負って絶対に優勝する」。2人は予選、準決勝をトップで通過。「この日2人には力みがなく、よほどのことがない限り勝てる」と中野も手応えを感じていた。しかし、決勝で予期せぬアクシデントが起こる。スタート直後、矢野の手からオールが離れてしまった。専門用語でオールが手から離れてしまうことを『腹切る』という。「通常腹切ってしまうとオールが折れてしまうことが多く、レースにならない」と中野が話すように、諦めざるを得ない状況に2人は追い込まれた。「後ろから矢野の声が聞こえた瞬間、反射的にボートを止めた」。その時野本は矢野の筋肉が吊り易いことを思い出していた。オールが折れるという最悪の事態を野本が救いレースを立て直した。その後猛追し、500m手前でトップに立った2人は残りの距離を冷静に判断し、ラストスパート。トップでフィニッシュした。「嬉しい気持ちしかなかった」。初の全国制覇は印象深いレースになった。
 今後インターハイ、国体を控え「全員で笑って終わりたい」と新主将の野本が言えば、「全て優勝して先輩たちを越えたい」と矢野。アクシデントを乗り越え頂点を掴んだ2人が、新たな伝統を作り上げる。

PHOTO:アスリートパーク

矢野哲圭[やのてつよし]

1994年7月22日生。177cm、66kg。広島県広島市出身。宮島工業高入学後ボートを始め、昨年はダブルスカルでインターハイ2位。好きな言葉は「頼ることでできる信頼」。


野本耕司[のもとこうじ]

1994年11月8日生。174cm、62kg。広島県廿日市市出身。矢野と同じく高校入学後ボートを始めた。今年からキャプテンとしてチームを引っ張る。好きな言葉は「自分と勝負」。



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